「辻が花」は直訳すれば、「道端に咲く、なんてことのない花」です。
椿、菊、梅、撫子・・・古来より、あらゆる草花、自然、がモチーフ(題材)としてきものや絵画に
使われていますが、この「辻が花」、現実の「ある花」を指しているわけでは
なく、モチーフを持たない(!)のです。
・・・・人々の想像が生んだ花。実在しない、空想の美。
いつ、誰がどのようにして、これを生んだかは大きな謎であり、詳しく分かっていないのですが、
室町時代に一世を風靡した事実だけが残っています。
辻が花染めは「絞り」と「染め」「ししゅう」の併用で作られます。
大変高度な技法であり、当時は上流階級の男性のためのものでした。
(大河ドラマに出てくる武将のほとんどが着ています。)
これに対等に競える技術、華やかで、美しいデザインは、
江戸時代に友禅染めが確立するまで、待たなくてはなりません。
久保田一竹と辻が花。
長い、長いあいだ、辻が花は歴史から消える時代を迎えます。
それが、再び日の目を見ることになるのは、ひとりの生涯をかけた
情熱でした。今年(2003年)亡くなった久保田一竹さん。
14才から染色をはじめ、たまたま20才の時、
博物館で室町時代の「辻が花」に出会います。
シベリアの抑留生活を経て、戦後、その再生に惜しまない努力、研究を
重ね、60才になって「一竹辻が花」として発表します。
こうして「辻が花」がよみがえりました。
久保田一竹さんは、アメリカのスミソニアン美術館で初めて個展をひらき、
生涯きものを通じた作品、富士山と「春夏秋冬・宇宙」を表現する連作
に取り組みました。
今でも、山梨県の一竹美術館でその一部を見ることが出来ます。
「わたしたちの心の中で咲く花」。
もちろん、ウレシイ事に季節に左右されることのない花ですので、
いつでも、きものを着たい時に、用意したいものですね。
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